『弦を抱える』弓道練習メモ '22/12/24, 23/01/07, 01/14

所感・解説 [メモの引用は緑字表記]

前々回の記事で、背面側に引いて伸びようとする癖（下図）の矯正について書きましたが、今回もそれに関わる内容です。特に、馬手を肩支点で引き込んでしまう癖に対して、どのように意識や感覚を変えていくかについて触れています。

この癖は「引き過ぎ問題」とも強く関連する部分があるため、早期解消を実現しなければならないという背景もあります。引き過ぎ問題を早期解決しなければならないのは、それが早気矯正に大きく影響するからです（思い切って伸びに行けない）。

さて、前段が長くなりましたが、今回のキーワードは『抱える』です。

私が過去に聞いた教えに、弓構えの際の腕や体の使い方として「大木を抱える」という表現がありましたが、今回のメモにある『抱える』で抱えるのは大木ではなく、弦です。

では、その「弦を抱える」というのはどういう動作や状態を言っているのかですが、まず、「抱える」の辞書的な意味を見てみると、「物を囲むように腕を回して持つ」とあります。この「物」が弦であり、それを馬手前腕、そして拳で外から包むように取り懸けるイメージが今回の「抱える」です。

この動きは、まさに従前の「肩支点で肘を背面へ下げて拳で弦を張り出す動き（上図馬手部分）」を逆へ矯正させるためのものです。

このイメージへ到達したのは、前々回記事で述べた経緯「上図の状態⇒引き過ぎ抑止のため馬手肘を前方向にした⇒拳が体から離れた⇒体を起こすことで腕も共連れとなって起き、前腕・拳が近づいた」を経たことにより、従前のように馬手拳を前に張り出すのとは逆の、外から弦を包み込むような感覚に気づいたからです（下図）。

今回メモの『馬手は、起こす＋手先まっすぐで、少し抱えるような感覚』は、そのあたりを述べたものです。

「手先まっすぐ」という感覚も大事で、これは、従前の拳を張り出す形のときと比べて、抱えるようにしたときの「前腕と拳の角度」が小さくなって、直線に近づくことによるものです。

たぶん、見た目ではそれほど大きく変わってはいないのだろうけど、本人の感覚的には本当にまっすぐになっているくらいの劇的な変化を感じているはずです。

逆に言うと、このブログでよく言っている、極端にやっても足りないくらいなんだから、ということです。それ系の話は癖の荒療治カテゴリが詳しいですよね。

あと、そもそも拳を張り出すように引いてしまっていたのは、弦を親指付け根で体の前面方向に強力にに押し出すことで、「絶対にこぼれないようにしておきたい」という心理が働いていたからだと思います。

やっぱり早気への恐怖心が根底にあるのでしょう。どこまでいっても早気の影を感じる。いつか黙らせたい。

ちょっと脱線しかかりましたが、「抱える」導入の文脈の中での『重心前に行かないように。重心が前に行くと抱えるようにならない』というのは、非常によくわかる話です。

重心が前に行く≒上体が前に突っ込むと、相対的に肘は背面に入る形となり、従前のレイアウトに逆戻りしてしまうので、それを避けたいのです。

なお、誤解なきように少し補足すると、抱える形へ変えようとしたことによって重心が前になりがちになったわけではありません。むしろ逆です。

元々上体が前に突っ込んで前重心で引いていたのを、抱えるようにしたことにより上体を後ろに戻すような力が働き（上図）、重心が正しい位置に近づいた。しかし、そもそもが重心の改善を意図した矯正ではなかったため、無意識に元の慣れた位置に戻ろうとしがちであり、そこから「抱える」までも無意識に巻き戻しとなりかねない。これにくぎを刺す、ということです。

これは癖の矯正においては往々にして起きる事象です。そういうのもだいぶわかってきた。そうそう好きにはさせんぞ。

またちょっと脱線しそうになりましたが、ここまで書いてきて思うのは、今までずっと、まっすぐ引いて真っすぐ離して(？)いなかったのだな、ということ。

今回の記事は体の前後方向のたわみに関してでしたが、上下方向でも上から下への力をかけて引いてきました。たぶん離れを見るとその力の流れは一目瞭然だったのではないかと思いますが、自分では普段見ることができないし、人が見ても、本人がそこに問題意識を持っていることを知らなければ、あえて指摘してはくれないかもしれません。

本格的な矯正の着手が遅きに失した感はありますが、やらないともう先には進めなさそうなので、やるしかありません。

曲がっているものを叩き直す。

叩き出しの鈑金修理みたいなもので、強く叩いて大きく直さないといけない部分もあれば、小さく何回も叩いて細かい調整が必要な部分もあるでしょう。

併せて性根も叩いた方が上達が早いかもしれないが⋯

それは叩かないのが大前提です。

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