所感・解説 [メモの引用は緑字表記]
離れの際、両手先が上方向に飛ぶのを「バンザイ」、下方向に飛ぶのを「ペンギン」、下に飛んでから上に戻ってくるのを「バウンド」などと呼んでいました。
これらは上下方向の動きについて表現したものですが、前後方向についてはそういうあだ名?みたいなものは特になかったように思います。このことは、前後方向の位置取りや力のかけ方については、私自身が意識の対象としてこなかったということを意味しています。
しかし実際には、意識する必要があったのにしてこなかったのであり、もっと言えば「問題はあるのにそれが見えておらず、矯正に着手できない状態」だったのです。
では具体的にどんな問題だったのか。
元々の私の射は、弓手も馬手も背面方向に伸びて(引っぱって)バランスを取っていたので、離れると当然両手先は背面方向に飛びます。この現象はなんて呼ぶのがいいでしょうか。「スキージャンプ」とかかな。いやあれは手が背面にいってるわけじゃないか。
とにかく、この状態を放置して引き続けてきたのですが、2020年くらいになると、引く方向や伸びる方向についての課題意識を持つようになって、ちょこちょこメモに登場するようになります。これには様々な経緯があると思いますが、一つ大きいのは、背面方向へ伸びるのが「引き過ぎ」の主要な要因の一つであるということが分かってきたのがあると思います。
引き過ぎは常に目に見える悪癖(99cmの矢をカツカツまで引いてしまう)なので、この解消は最優先レベルという認識を持っていました。
それでも、この手の歴史的悪癖は一朝一夕には治らず、断続的に矯正を続けながら時間が経過していきました。
今回取り上げるメモは、2022年秋ごろの矯正の過程です。
メモの内容に入る前に、まず従前がどんな状態であるのかを説明します。
「伸びる方向が背面」と言いましたが、全ての部位が背面方向なのではなくて、下図のごとく少し複雑なことになっています。
馬手は、肩が支点となり、担ぎ込むような感じで肘が背面および下方向に入ります。手先は手首で吊り上げるような形で矢筋に乗せます。
弓手は、肩は抜けて差し込まれ、前腕と手先で背面方向の力をかけて馬手の背面への力とのバランスを取ります。
離れでは、馬手先は裏的に飛び、弓手先は背面方向に飛ぶので、矢は狙いより後ろに飛びます。そのため、狙いは少し前につけておかないと的の方に飛びません。しかしながら、本人には前を狙っている感覚はないし、後ろに飛ばしこんでいる感覚もありません。
こんな状態スタートで、まずは引き過ぎへの影響が大きそうな馬手肘の方向が背面なのを、裏的にすることから着手します。
馬手肘の方向を裏的にするには、肩を支点として働かせることの解消と合わせて行う必要があります。このあたりをメモでは『馬手の方向を変えると馬手肩に壁ができる』と表現しています。今まで曲げていた肩を、曲げずに伸ばすような動きに変えたため、「壁」ができたような感覚を覚えたのです。
こういう感覚はとても大事です。でもうまくいっていると段々慣れて感じ取れなくなっていき、それに満足していると何かの拍子に崩れても気づけない、というケースも多いので、感覚を取りに行く意識を能動的に継続することも必要。
そして、この矯正の旅で次に出くわす事象は、当ブログに何度か出てきたやつ⇒「一つ変えると、悪癖なりにとれていたバランスが崩れるため、射が不安定になる」です。
もはや、正しくバランスが取れる形になるまで、変え続けていかなければなりません。『弓手肩にも壁ができるように引かないと釣り合いが取れないか?』は、まさにそんな状況下で模索中のコメントです。従前の弓手肩は馬手肩とは逆に抜けて差し込まれる状態ですが、「壁を作る=伸ばして引き出す」のはこっちでも正しそうです。
しかも、『右も左も同じ力の流し方でとりあえずやってみる』とあるように、左右を一つの意識で行えるので、シンプルで混乱しにくそうでもあります。
でも、まだまだバランス崩れの連鎖は終わりません。すぐに新たな問題が明らかになります。『胸弦は縦線でつける』という記述から、会での弓の位置が遠くなって胸弦がつかなくなったことがわかります。これは、背面側に引き込んで丁度胸弦がつくような体のレイアウトだったところから、腕を前面へ押し出す形へ変えたため、自ずと離れてしまったと想像できます(下図)。
特に馬手肘を前に押し出した影響が大きく、矢が大きく後ろ向きになり、会は安定しないわ矢はとんでもなく後ろに飛ぶわで、いい加減にしろってなること請け合いです。
しかもこれ、上記でリンクをつけた先の記事と同じ症状じゃないですか... ひどい堂々巡り。
とは言え、自分でやると決めたこと。何とか解決策を見つけねばなりません。
上記記述にあるように縦線で寄せられないか試したり、胴を起こすことで弓矢が体に寄らないか試したりしています。
元々の姿勢が猫背なので、『普段の姿勢から体を起こす』ように心掛けて、弓道以前の問題は確実に解決しておかなければなりません。
一方で、単純に上体を起こそうとするだけだと、今度は肩が背面に落ち込んでふんぞり返ったみたなレイアウトになってしまうので、『肩線は前に残る』ように意識した方がいいかもしれません。いずれにしても、一から姿勢を見直す必要がありそうです。
ともあれ、これらを行った感じは悪くなさそうで、『体を起こしてあれば、ことさらに寄せる意識は要らない』との記述があります。体を起こしたことで腕も友連れで起こされ、前腕が体に近づいたのかもしれません。
さて、このまま一気に矯正完了、なんてことには当然ならないだろうけど、瞬間瞬間でできたことを素直に喜ぶのはありかもしれない。
一喜一憂せずに、とありたいところだけど、どちらかというとできないことの方に気を取られがちな性格なので、その辺も少しずつでも矯正していかなければ矯正ドミノとの長期戦は戦い抜けないかもしれない。それに何より、できないことばかり見ていたら楽しく弓が引けない。
若いころは性格や考え方は変えられるとは思っていなかったけど(変えられるかどうかなんて考えもしなかったけど)、これが意外とできる、というのが年を重ねるにつれてわかってきたのです。
この辺りは、弓道修練において意識の扱い方を試行錯誤してきた副産物と言える気がします。もちろん、発生した(発生する)感情を制御できるような次元では全然ありませんが、反応の仕方を少しずつなら変えていける、ということです。
↓↓ 記事を投稿したらX(twitter)でお知らせしていますので、よろしければフォローお願い致します
Follow @recroo_kyudo
- -スポンサーリンク(楽天市場)- -
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
この日のメモ [メモの活字版 (画像は最下)]
221104
馬手の方向を変えると馬手肩に壁ができる。弓手肩にも壁ができるように引かないと釣り合いが取れないか?
↑
これたぶんあってる
右も左も同じ力の流し方でとりあえずやってみる
221105
胸弦は縦線でつける。
力の方向、着矢点を明らかにしつづけること
221110
普段の姿勢から体を起こす。
左も右も力の使い方を完コピでやること。
(つまりちょっと前方向な感じ)
221112
そして肩線は前に残る
221119
体を起こしてあれば、ことさらに寄せる意識は要らない。
弓手肩は前に残す意識がまだ要るかもしれないが、馬手は不要。やろうとすると矢筋が崩れる。